2020/03/02

香港人事管理・ここがポイント(雇用条例編)「残業手当、カットしちゃって大丈夫?! ― 雇用条件変更」

 

ポイント② 雇用条例編

その8. 「残業手当、カットしちゃって大丈夫?! ― 雇用条件変更」

 

☆P商事営業部の山田部長は、景気の減退でお客様からのオーダーは減少の一途なのに、 セールスアシスタントの残業手当が減りません。そこで雇用条例で規定していない“残業 手当”を廃止することで、コストカットを考える山田部長です。でも、既に手当の支給は慣習 化していることから、雇用条件の変更となってしまいます。果たして変更ができるのでしょう か?そこで、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに尋ねてみることにしました。

 

山田部長 すみません、ポイントさん、ひとつ相談にのってくれませんか?販売量が減少している中、コストの見 直しを計るしかない・・・
ポイントさん コストといいますと?
山田部長 給与を下げるわけにはいかないでしょ。だけど“残業手当”を廃止してもいいかと思いましてね。とい うのも、香港地元のベンダーさんでは“残業手当”は一切支給していないというじゃないですか。それ なら、ウチでも残業手当を止めさせてもらってもいいんじゃないかなと・・・
ポイントさん 確かに香港雇用条例に“残業手当”に関する規定はありません。
山田部長 やっぱりそうですか!それじゃあ、☆P 商事香港営業所も残業手当を廃止してコスト削減ができますよね?
ポイントさん できないことはありませんが、先ほど、給与は下げるわけにはいかないとおっしゃったのですが、残業 手当も給与の一部なのです。特に残業時間が多い社員との交渉は非常に難しいものになると思い ます。
山田部長 社員とは交渉しなければならないのでしょうか?会社からの通知とだけにしておけば良いのでは?
ポイントさん 雇用条件の変更になりますので、一方的に廃止するわけにはいきません。本人に説明し、了解して もらわないと「雇用条件の改悪」牽いては社員に『推定解雇』と見なされてしまうリスクがあります。
山田部長 推定解雇ってそんな!聞こえが悪いじゃないですか。誰も辞めて欲しいと思って残業を廃止するの ではありませんよ。
ポイントさん 手当が廃止になることで、誰が、どれぐらいの影響を受けるかを調べ、対象となっている社員からの 同意を得られるような代替案を考えてみましょう。どちらにしても、相手のあることですから、同意を 取り付けられなければ実施はできません。
山田部長 代替案と同意が必要ですか・・・
ポイントさん 対象となる社員に対しては、雇用条件の改定を実施する前に、充分な猶予期間を取って書面を以っ て通知します。
山田部長 ふむふむ・・・
ポイントさん 次に残業手当の廃止、時給レートの見直しといった具体的な条件変更内容を雇用契約書の“付記” としてまとめ、これをもって個別に面談し通知します。
山田部長 はあ・・・
ポイントさん 一人一人の社員が、この条件変更について、それぞれの署名を以って了承したことを記録に残して おくことで「雇用条件の改定」が初めて実施できるわけです。
山田部長 面談のおりに、自分は同意しない、署名もしないと社員が主張した場合、どうなりますか?
ポイントさん 社員からの同意、署名が取れない場合は、その社員の意思を無視して、“見切り改定“することは出 来ません。
山田部長 はい。
ポイントさん 又同時に、社員からの同意が取り付けられないからといって、会社が既に切り出していた改定案を 取り下げるという事は、人事管理上ではタブーです。
山田部長 そうなんですか。
ポイントさん でも、このような交渉決裂は想定内の反応ですので、事前にどう対処するべきかを良く考えておかな ければなりません。
山田部長 交渉決裂の場合、通常どのように対応するんですか?
ポイントさん 会社都合で雇用契約を解除するということになります。
山田部長 ちょっと待ってくださいよ!僕は別に、社員に辞めて貰いたいと思って残業手当を廃止しようとしてい るわけではないんです。
ポイントさん そうですね。でも採用条件の変更となると、このような結末も想定しておかなくてはなりません。
山田部長 そういうことなんだ!私は、オーダーが減れば業務量も減少している、しかし残業手当が減少しない のはおかしいと思っているだけで・・・
ポイントさん それなら、残業申請のルールを見直されてはどうでしょう。
山田部長 残業申請ルールの見直し・・・
ポイントさん 残業は申請してから実施するという管理が必要です。でも、実際は仕事に追われ、残業の事後申請 を許してしまわれますよね。
山田部長 良くある、ある。
ポイントさん そこをまずしっかり管理して、不必要な残業はさせないようにしてください
山田部長 そりゃそうだ!
ポイントさん また、もし残業手当廃止するにあたり、社員を納得させる代替条件を打ち出すと、残業を見なしで基 本給に入れ込むなどして返って固定給をかさ上げすることに・・・
山田部長 いやいや、それでは、本末転倒ですよ。
ポイントさん そうでしょ。滑って転ばないように、管理の足元を見てまいりましょう!

 

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