2020/03/16

(日本語) 香港人事管理・ここがポイント(香港ワーキングスタイル編)「部下の返事にピンとこない時」

パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子

 

このコラムでは、弊社HRM(人事・労務管理)ホットラインに実際に寄せられた香港・華南の日系企業管理者の皆さんからの数々のお問い合わせの中から、日常的に起こりがちな人事管理の様々な問題についてご紹介しながら、その対応や人事管理についてのポイントをご紹介していきます。

毎回、架空の日系企業“☆P商事”で起こる様々な問題について、人事労務コンサルタントの通称“ポイントさん”が明快なサッジェッションをして参ります。労働法解説に留まらないポイントさんの分かりやすいコンサルテーションは、きっと皆さんの人事・労務管理の実務として今日からお役立ていただけることでしょう。

今春の香港では、景気の回復によって業務拡大や業務量増加による“新規採用”ケースと、社員の退職による“欠員補充採用”が相まって、採用件数が急増。特に今年は、旧正月前のダブルペイを待つこともなく、一月も早々から離職率が高くなってきており、とりわけ、ダブルペイ・ボーナス支給・評価・昇給といった人事一連の流れが終わる春先は、“転職たけなわ”となっています。

そこで、今回、“ポイントさん”に寄せられたご相談は「退職願」についてです。

 

 

☆P商事(香港)営業所の山田営業部長は、入社して2カ月を過ぎたばかりの営業部アシスタントの陳さんから「退職願」を提出されて困っています。

山田部長
「忙しい時に、陳さんから辞表を出して来られましてねえ。こんな手紙一枚で簡単に辞められちゃうんだね」

ポイントさん
「香港は、雇用関係が比較的シンプルなところですからね」

山田部長
「シンプルな雇用関係ってどういうこと?」

ポイントさん
「香港法例の雇用条例第八章では、試用期間の有無にかかわらず、勤務第1カ月目における雇用契約終止のための「通知期間」を“1日”と定めています」

山田部長
「入社一カ月目だとたった1日か・・・、それじゃ、陳さんの場合には・・」

ポイントさん
「陳さんは、入社2カ月目ですから“7日”を下回らない期間とあります。つまり、雇用契約書に明記すれば、通知期間を7日間、または、7日分の給与弁償で雇用契約を終止できるわけです。シンプルな関係でしょ」

山田部長
「本当だね。でも、7日間以上といわれても、そんなの後任も見つからないよ」

ポイントさん
「しかし、この通知期間は、雇用者、被雇用者双方の立場からの雇用契約終止を想定したものですから、フェアーな関係とも言えますよ。例えば、入社してから期待したほどの能力がないと試用期間内の早いうちに分かった社員の場合、山田さんならどうされます?」

山田部長
「そりゃ、厳しいようだけど、即戦力が必要だから、正社員として受け入れられないという判断がついたのであれば、なるべく早く辞めてほしい。会社からの通知期間は短いに越したことはないね」
ポイントさん
「そうでしょう。でも、これもフェアーな関係ですから、優秀な社員から辞職を告げられた場合にも、同じように短期間の通知期間で辞められてしまいます」

山田部長
「そりゃそうだね。じゃ、実質的には、後任探しや引き継ぎも考慮する必要があるから、試用期間の最終月には、7日よりもさらに長めに設定しておくこともできるのかな?せめて2週間ぐらいほしいよね」
ポイントさん
「可能です。もちろん雇用契約書に明記してくださいね」

山田部長
「そうそう、それから、もう一つ。陳さんには、日本研修へも参加させていたんだよ。経費も時間もかけたのになあ。例えば海外研修を受ける条件として、1年は辞められないといった規制はできるのかな?」

ポイントさん
「香港の労働法には、研修に関しては定めていません。言い換えれば企業が規制を自ら設定することができます。研修参加に当たり、覚書を取り交わしておくのが良策でしょう」

山田部長
「具体的には・・?」

ポイントさん
「例えば、研修終了後に離職できない一定期間の設定や、万が一辞職の場合には、研修経費を明記しておき返金してもらう条件や、規制期間の残り日数分の給与相当額を返金するなど厳しい条件も考えられます」

山田部長
「結構厳しいね」

ポイントさん
「採用も、研修も、最初に会社からの条件を決めて書面化しておく、そして、きちんと社員にも納得させ“契約”しておくことが必要です。皆さんには、面倒だと思われるかもしれませんね」

山田部長
「なるほどね、契約社会だものね。勉強になったよ、ポイントさん」


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