第61回 「組織体質の成り立ちと、社員育成の必要性」(2)
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
☆P商事(香港)営業所の経理部では、新入社員のアイダさんが入社し3ヶ月目を迎えています。アイダさんは、経理としての職務知識、経験ともに充分している上に、新しい視点から業務の内容を見直してくれています。☆P商事において、今後の理想的な中間管理職の社員モデルとなってくれると、川崎経理部長は密かに期待していました。ところが、彼女の直属の上司である入社歴18年目のリタさんは、アイダさんについて評価していないと言い出しています。川崎部長は、これは以前から気になっていた経理部の組織体質が、次代の社員の育成を妨げる要因となっているのでは・・・と、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに聞いてみることにしました。
- ポイントさん
- 「リタさんとアイダさんの真ん中に挟まれ、ハム状態になった川崎部長のサンドイッチ脱出作戦でしたね!」
- 川崎経理部長
- 「いや、サンドイッチでも、ホットドックでもいいんですが、良い解決策を教えてください!リタさんが、アイダさんの試用期間を延長させると言ってきまして・・」
- ポイントさん
- 「そうですか・・・」
- 川崎経理部長
- 「でも、リタさんは、あれだけアイダさんについて散々言いながらも、辞めさせて欲しいとは言わないんで、試用期間延長というのは、アイダさんのこれからに期待しているという証拠ですかね?」
- ポイントさん
- 「それは全くの勘違いです。試用期間を延長された社員のダメージをご存知ありませんか?」
- 川崎経理部長
- 「ダメージ?」
- ポイントさん
- 「管理職に近いレベルで採用されたアイダさんのような場合は特に、少なくとも試用期間にミスを犯すことなど考えられません。ですから、試用期間延長というのは、会社側の大変厳重な態度となります。延長されても結果的に正社員として認められない可能性が高いとも考えられ、時間を引き延ばしても正社員になれなかったら再就職へ先への影響もありますから、社員から先に辞めるのが賢明と考えるのが一般的です」
- 川崎経理部長
- 「はあ?!・・ということは、リタさんは・・・」
- ポイントさん
- 「アイダさん自身が辞めていくだろう・・・という筋書きではないでしょうか?」
- 川崎経理部長
- 「延長という、これは追い出しですかぁ!!」
- ポイントさん
- 「川崎部長、そこで慌てている場合ではありませんよ。これからの対応が肝心です。ところでリタさんは、どんな理由でアイダさんの試用期間を延長しようとしていますか?」
- 川崎経理部長
- 「アイダさんが、業務内容の細部をいろいろ聞いてくるが気に食わない、これは彼女の経理知識の不足のせいだとか、経理部外の人にまで経理部の話をいろいろしているんじゃないかとか・・・そのような批判をしていました」
- ポイントさん
- 「ふむふむ・・」
- 川崎経理部長
- 「この話しを聞きながら、私は一つ思い起こしたことがありました。私が赴任してきた2年前のことです・・・」
- ポイントさん
- 「はい・・・・・」
- 川崎経理部長
- 「経理部の雰囲気が、その、何というんでしょうか、活気に欠けるチームだなあ・・と思ったんです」
- ポイントさん
- 「活気に欠ける・・」
- 川崎経理部長
- 「そうです。みんな黙々とまじめに仕事しているから?平均年齢が高いので大人しい?と考えたのですが・・・」
- ポイントさん
- 「そういうことが理由ではないかもしれませんね」
- 川崎経理部長
- 「ポイントさん、活気に欠ける組織となったのは何が原因となるのでしょう?」
- ポイントさん
- 「仕事のやり方に原因があるのかも知れませんね」
- 川崎経理部長
- 「ほお?!」
- ポイントさん
- 「活気というのは、人々が生き生きしている様子。会社では、社員の表情や反応、コミュニケーションの仕方にそれが見えかくれしていることでしょう。経理部では、もともと変化の少ない業務である上に、コミュニケーションをあまり必要としないやり方で仕事をしているからではありませんか?」
- 川崎経理部長
- 「う~む。そういえばそうかもしれません。経理部では、リタさんが、経理業務をぶつ切りにして、それぞれ担当を決め仕事をさせています」
- ポイントさん
- 「流れ作業のようにですね」
- 川崎経理部長
- 「そのとおり。だから、スタッフは、事前に配分された内容を与えられた時間内に済ませればそれで良いわけで、お互い仕事内容について意見を交わしたり、検討したり、相談したりする必要が基本的にはないのです」
- ポイントさん
- 「そういうことですね。一旦決めれば、その流れは久しく変えてはいらっしゃらないでしょう」
- 川崎経理部長
- 「変えてはいません。でも、不思議なことにアイダさんが入社してから、部に活気が出てきたように思われたのです。実は、彼女には早速ですが、新規プロジェクトの担当をやってもらっています。その関係上、それぞれのスタッフから業務の聞き込みをしていますが、そのたびに、自分が担当している仕事の範囲以外についても説明しているようで、今までは、隣の人が何をしていようが関係なかった様子でしたが、皆が興味の枠を広げてきたようで、最初はただ単にヒアリングでしたが、そこからコミュニケーションが生まれ、活気が出てきました」
- ポイントさん
- 「コミュニケーションを取ることで、組織に活気が生まれてきたのですね」
- 川崎経理部長
- 「そのとおりです。でもこれは、リタさんのやり方とは対極にあるもので、彼女はどうも気に入らない・・・」
- ポイントさん
- 「そうでしょうね。これは、リタさんにとっては、ちょっと荒療治ですね。でも、川崎部長がアイダさんを採用されたことの効果が、既に上がっているではないですか!それも、2年前から気になっていた経理部の体質を改善することにも繋がってきている。このアイダさん採用がきっと画期的な方策に繋がると思いますよ!」
- 川崎経理部長
- 「うう~ん!ポイントさんもそう思っていただけますか?!」
- ポイントさん
- 「アイダさんには、どんな相手とも話が上手くできるコミュニケーションスキルがありますね」
- 川崎経理部長
- 「経理部への今までの悪評に、大きく風穴を開けてくれると思います!」
- ポイントさん
- 「経理部の悪評?!」
- 川崎経理部長
- 「ポイントさんの耳にも入っていませんか?経理部は、不親切で全く融通が利かない、まるで昔のお役所仕事・・・と言われているのを」
- ポイントさん
- 「そういえば、少し聞いたことがあります」
- 川崎経理部長
- 「これからは、経理部として社内サービス部門としての意識を高める、そして、このような悪評をぶっ飛ばす~!」
- ポイントさん
- 「おっと、すごい意気込みになってきましたねぇ」
- 川崎経理部長
- 「社外的なサービス機能を携わっている営業部やカスタマーサービス部のみならず、人事・経理・総務部の事務方も、実際には、社内に社員というクライアントがいるわけですよ。社内サービス部門としての機能を果たすことが、今、我々に問われてきています!」
- ポイントさん
- 「社内サービス部門としての機能を果たす・・とは、とても素晴らしい発想ですね!」
- 川崎経理部長
- 「実は、これはアイダさんが私に採用面接で話してくれた、彼女からの受け売りなんですが」
- ポイントさん
- 「受け売りでもなんでもいいですよ!社内でのサービス意識を高める姿勢から、部門の体質
改善、強いては会社全体のサービスレベルを上げることにつなげられるのではないでしょうか?」
- 川崎経理部長
- 「う~ん、ポイントさんのお墨付きをもらえたので、急に元気が出てきました!!」
- ポイントさん
- 「それじゃ、次号では、解決させてみせましょう、サンドイッチ脱出作戦!」
- 川崎経理部長
- 「ああ、そうでした!興奮している場合じゃありませんよ、早く解決策をお願いしますぅ・・・」
・・・・・次号につづく・・・・
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