第59回 雇用契約の解除
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
☆P商事(香港)営業所では、去年の今頃とは打って変わり、忙しい毎日が続いています。その上、去年と様子が違ってきたのは、営業状態ばかりではありません。社員からの辞職願いが相次いで提出され、人事事情も同様に変化してきているようです。山田営業部長は、営業活動の合間を縫って、香港事務所で採用面接に四苦八苦する今日この頃。そこで、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに雇用契約の解除について聞いてみることにしました。
- ポイントさん
- 「山田部長、今日も採用面接、お疲れ様でした」
- 山田営業部長
- 「ホントに疲れましたよ。営業トークは慣れているんですが、採用面接トークとなると、ちょっと調子が違いますね。本社勤務の時には、採用面接なんて、僕には全く関係ない仕事でしたから・・・」
- ポイントさん
- 「それはそうでしょう」
- 山田営業部長
- 「でも、それにしても、旧正月が終わったころからですね。ポツリポツリと退職願が出始めたのは。営業担当が1人、サポートスタッフが二人と、続けて辞められるとキツイです」
- ポイントさん
- 「年末のダブルペイの後ですね・・それは、かなり、見えてきましたね!」
- 山田営業部長
- 「見えてきたって、まだ採用できていないんですよ」
- ポイントさん
- 「いやいや、採用ではなく、香港人に転職の兆しが見えてきたということです!」
- 山田営業部長
- 「まあ、そういうことですが。でも、ポイントさん、ウチのスタッフが辞めた話をえらく明るく語ってくれるじゃないですか?!」
- ポイントさん
- 「香港の人々が転職しない年末は、1997年中国返還、アジア金融危機、SARS後など、私としては、今回のリーマンショックにおいても、どれだけ経済的な回復まで長期化するかと危惧していたものですから」
- 山田営業部長
- 「はぁ・・・まあ、ご心配はわかりますけれど、香港の将来を語る前に、ちょっと身内の僕の身にもなってください!」
- ポイントさん
- 「そうでした!」
- 山田営業部長
- 「それにしても、香港の社員は、辞職願は、ホントにきちんと書いて出してきますよね」
- ポイントさん
- 「それはもう☆P商事の雇用契約上にも、辞職願は書面で提出することと定められていますから」
- 山田営業部長
- 「そう言えば、僕が始めて☆P商事香港営業所の雇用契約書を読んだ時はびっくりしました」
- ポイントさん
- 「びっくりといいますと?」
- 山田営業部長
- 「それは、採用したばかりの社員と、最初から辞職/解雇の条件を話すわけですから」
- ポイントさん
- 「香港雇用条例に、試用期間満了後の社員には、(通知期間の合意がある場合)最低7日/(通知期間の合意がない場合)1ヶ月前の通知、または、通知金としてその通知期間分の給与を支給するとされています。香港においては、この内容はいわば常識なので、誰も驚いたりしませんよ」
- 山田営業部長
- 「それは、今に成れば良くわかります!」
- ポイントさん
- 「でも、会社によっては、管理職に対して1ヶ月以上の通知期間を定めることもありますが」
- 山田営業部長
- 「ええっ?それはもっと早く教えておいてほしかったなあ・・・1ヶ月以上ということでもよければ、営業部の社員にも、通知期間を2、3ヶ月として決めておけば、こんな忙しいときに、4週間やそこらで辞められてしまうことにはならなかったのに!」
- ポイントさん
- 「あのう・・先ほども申し上げたように、2~6ヶ月と長期的な通知期間は、よほどの重責で管理職を対象とした採用の場合に適します。一般職の社員には、とても敬遠されてしまいますよ。採用条件としては不利であると考え、入社自体を敬遠されてしまうことにもなりかねません」
- 山田営業部長
- 「そうですね・・・」
- ポイントさん
- 「それからこのルールは、社員からでも会社からでも、双方同様に言い出すことができる公平なものですから」
- 山田営業部長
- 「公平・・というか簡単なのですねえ・・それは、難しいなぁ・・・」
- ポイントさん
- 「難しい?」
- 山田営業部長
- 「辞職した営業サポートのジェニーさんに、仕事は最後まで責任を持って対応し、引継ぎをきちんとしてもらいたい!とリクエストしたのですが、通知を出したその日から、会社の仕事に気持ちが入っていない様子で・・・」
- ポイントさん
- 「雇用における規制が少ないというのは、企業においてはありがたい部分もあります。しかし、それは同時に、社員の帰属意識を希薄にしている側面もあるということです」
- 山田営業部長
- 「確かにそうですね。これでなんとなく、ジェニーさんの今の気持ちが判りましたよ」
- ポイントさん
- 「でも、仕事は仕事。そこで、あくまで社員である限り、最後の日までしっかり働いていただくように、管理側で少し知恵をつかってみましょう」
- 山田営業部長
- 「知恵?」
- ポイントさん
- 「そうです。それは、会社からのリファレンスレターです。社員の仕事の質と量を最終日までチェックしてから用意する習慣をつけましょう。そして、社員の誰が辞職しても、常に同じように対応しておきましょう」
- 山田営業部長
- 「なるほど!」
- ポイントさん
- 「話は、中国の労働法に移ります。中国でも試用期間が終わり、正社員としての雇用契約期間になると、社員は会社へ1ヶ月通知を提出することで、仕事を辞めることができます。しかし、会社から社員へ一ヶ月通知を出しても、通知のみでは済みません。解雇保障金支給いの義務も課せられダブルで付いて回ります」
- 山田営業部長
- 「そうなんですか!!」
- ポイントさん
- 「えっ~と、それじゃぁ。今日はこの辺でお先に失礼致します」
- 山田営業部長
- 「えっ?!ちょっと、待ってください、ポイントさん。この後、久しぶりに焼き鳥屋にでも行きましょうよ?」
- ポイントさん
- 「いやあ、行きたいのはやまやまなんですが、先週、歓送迎会ばかりが続いて帰宅が遅い日が多かったことをさっきの話で思い出したものですから・・・・」
- 山田営業部長
- 「そ、そればヤバイですね。マジで奥さんから一ヶ月通知が出たりなんかして・・・」
- ポイントさん
- 「冗談じゃないですよ、一ヶ月通知だなんて生温い!我が家のルールは即日解雇!その上、法外な補償金を請求される恐れもありますから!」
- 山田営業部長
- 「世界で一番キビシ~!!」
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- パソナアジアカンパニーリミティッド/人事労務(HRM)アドバイザリーサービス部
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