第58回 香港の春、昇給の春は、春霞?!
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
☆P商事(香港)営業所の佐藤総経理にとって、3月は決算月、4月は昇給月に当たり、頭が痛い月々が続きます。そんな中、丁度、ゴルフコンペで一緒に回った取引先の社長さんたちに、今年の昇給について聞いてみた佐藤総経理ですが、それぞれから、とてもまちまちな答えが返ってきました。他社の状況を参考にしたかったのに、益々見当がつかなくなった佐藤総経理ですが、そこで、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに聞いてみることにしました。
- ポイントさん
- 「このところの香港の空気汚染はすごいですね」
- 佐藤総経理
- 「香港の観測基準値でも計りきれない汚染数値らしいですね」
- ポイントさん
- 「しかし、このような悪環境下でも、ゴルフ接待とは、総経理も大変ですね!」
- 佐藤総経理
- 「ハイ!私はいつも、体を張って接待しているんですよ、ポイントさん」
- ポイントさん
- 「はぁ・・・スコアの方は、いかがなものでした?」
- 佐藤総経理
- 「いやあ、私のスコアなんか、気にしないでください。私のゴルフのスコア以外にも、もっと世の中には、見当がつかないことがあるもんですからね・・・」
- ポイントさん
- 「見当がつかないこと?」
- 佐藤総経理
- 「そう。春は昇給の季節ですから、一般的にどうであるのかが気になっていて、一緒に回った陳社長とスミス社長に聞いてみたんです」
- ポイントさん
- 「陳社長は香港の地元企業、スミス社長は米系企業での方でしたね」
- 佐藤総経理
- 「そうです。香港の取引先の中でも、この2社は、私たちとは同業界であり、組織サイズも同じくらいなので参考になるかと思っていたのですが・・・」
- ポイントさん
- 「そうですね・・・」
- 佐藤総経理
- 「ポイントさんもそう思うでしょ、でもねえ・・・」
- ポイントさん
- 「でも?」
- 佐藤総経理
- 「でも、この2社でさえも、今年の昇給に対する考え方が全く違う・・例えば、スミス社長の昇給プランですが、社員の中でも一般職に限って、3~5%の昇給幅で昇給実施を考えているというのです。でも、管理職については、今年は凍結を予定しているとのことでした」
- ポイントさん
- 「地元系の陳社長の意向はどうでしたか?」
- 佐藤総経理
- 「陳社長は、基本的には昇給には前向きではないとしながらも、社員の不満を積もらせないためには、2%ぐらいの昇給は避けられない・・・と言われていました」
- ポイントさん
- 「そうですか・・両社の去年の昇給実績については尋ねられましたか?」
- 佐藤総経理
- 「聞きました。なんと、両社とも、凍結だったというのです」
- ポイントさん
- 「私も先月、人事管理の勉強会で、陳社長とスミス社長の会社の人事部長さんともお会いする機会があり、その時にいろいろ聞かせていただきました」
- 佐藤総経理
- 「そうだったんですね」
- ポイントさん
- 「私は、各社の今年の昇給が何パーセントということよりも、その前段階について、すなわち、昨年からの人事についてお聞きしたかったので・・・」
- 佐藤総経理
- 「昇給の前段階について?」
- ポイントさん
- 「そうです。☆P商事では、昨年の課題は経費削減でしたね。例えば残業手当を削減したり医療保険を見直したりしました。しかし、総経理は、リストラは回避され、給与カットもされなかった。その上、昇給も平均1.8%の実施がなされましたね」
- 佐藤総経理
- 「そのとおりです」
- ポイントさん
- 「しかし、スミス社長の会社では、どうされていたかご存知でしょうか?」
- 佐藤総経理
- 「いいえ・・・」
- ポイントさん
- 「リーマンショック後直ぐ、会社の全ての部門から、それぞれ20%に当たる社員を一律解雇されたということです。また、解雇の対象とならなかった社員の給与も、一律10%カットという大変ドラステックな手法と取られたということです」
- 佐藤総経理
- 「はあ・・・」
- ポイントさん
- 「しかし、スミス社長は、その反面、去年の秋ごろのビジネスの戻りが見えたら直ぐに、人事政策を一変され、一般職を中心に積極的に採用されていました」
- 佐藤総経理
- 「そうでしたか・・・」
- ポイントさん
- 「陳社長の会社のこの1年をご存知ですか?」
- 佐藤総経理
- 「いいえ・・・」
- ポイントさん
- 「陳社長は、去年初め、社員数の10%に当たる社員を解雇されていたのですが、売り上げが落ち込んでいた時期には、それでもちょうどよかったのです。ところが、仕事が少し戻ってきただけで、すぐ人手が足りなくなり、その上、もともと残業手当を出していなかったので、社員の負担が募る一方でありました」
- 佐藤総経理
- 「経営者の立場としては、仕事量が安定し増加していくのかどうか予想できない場合、どうしても積極的な採用には踏み切れません」
- ポイントさん
- 「そして、昇給に関する情報については。香港の人事管理の団体であるHKIHRM(香港人力資源管理学会)が、香港大・中型企業の103社(社員数13万人)を対象に、昨年11月に実施した昇給調査結果が、今年も香港の各メディアで報道されていました」
- 佐藤総経理
- 「今年はどのような内容でしたか?」
- ポイントさん
- 「昨年の昇給実績ですが、回答した企業の64%が凍結したと回答しています」
- 佐藤総経理
- 「64%ですか・・香港の日系企業では、半/半ぐらいで昇給/凍結組みに二分したようですが、それ以上に厳しい結果となっていますね」
- ポイントさん
- 「また、今年の昇給計画と昇給率について質問した結果ですが、香港の一般的な昇給時期が、1月または4月であるにも係わらず、アンケート調査が実施された昨年10月ごろでさえ、その60%が昇給については未定と答えています」
- 佐藤総経理
- 「はぁ・・まさに、陳社長の気持ちがそのまま現れているような調査結果ですね」
- ポイントさん
- 「また、回答を寄せた29%の企業が昇給予定と答え、平均昇給率は2%と予定と答えています」
- 佐藤総経理
- 「われわれも、これらの調査結果をそのまま情報として活用できますか?」
- ポイントさん
- 「今年は、特に、それぞれの会社の事情を考える必要があると思います。まずは、この1年において、人事的な処置や変化の有無を振り替えります。そして、これからの1年における人事的な計画を睨んで、昇給やその率を決定する必要があります」
- 佐藤総経理
- 「ふむふむ・・・陳社長のように、昨年のリストラの後遺症が、社員の負担や不安として積もってきてはいないかを知っておく必要があるということですね。そう考えると、われわれの会社は、そこまで無理を社員に強いてはいませんから、今年の昇給率については、平均より抑え気味でも大丈夫ということでしょうか?」
- ポイントさん
- 「それは、毎年ご返答が難しい質問ですが、特に、今年は、この昇給時期に合わせているように、旧正月明けのころから、採用案件が急激に増えてきています。人材は、少しでも会社に不安要素があれば、転職の機会に敏感に反応することになりますから・・・」
- 佐藤総経理
- 「それは、去年と比べると、とても厳しい判断ということですね・・・」
- ポイントさん
- 「今日も向かいのビルがガスに霞んで見えていませんが、総経理は、コースでもボールを見失ったりはしませんでしたか」
- 佐藤総経理
- 「ポイントさん、私の場合、ロスト・ボールは日常茶飯事なので、見失ったボールの数と、香港の空気の汚染度数に相互関係はありません」
- ポイントさん
- 「??・・あっ、そういうことですか!それじゃ、次は総経理のために、社内コンペでは、ロスト・ボール賞の景品を用意しておきましょう」
- 佐藤総経理
- 「無くしたボールの数が多いともらえる・・・そんな賞、私は欲しくありませんよ」
- ポイントさん
- 「確かにあまり嬉しくないかも・・・」
- 佐藤総経理
- 「それより、昇給賞が欲しいですね」
- ポイントさん
- 「何ですか、その昇給賞って?」
- 佐藤総経理
- 「バンカーに玉を打ち込んだときを思い出してください」
- ポイントさん
- 「はい・・・バンカーに打ち込んだ・・・」
- 佐藤総経理
- 「それを、上手く“上げられた”でしょう(賞)・・ってことですね!!」
- ポイントさん
- 「ああ、昇給賞、私も欲し~い!!」
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