第55回 「タイトル(役職)と現地社員との関係?」 香港人のワーキングスタイル(8)
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
☆P商事(香港)営業所の山田営業部長は、春からいよいよ始まる新規ビジネスの担当者にさせるために、新しく人材を登用し組織固めを始めています。でも、山田部長は、頼りにしている新規採用のルイスが、自分のタイトルにこだわり続け、昇格の交渉を切り出してきたことが理解できません。現地におけるタイトルのもつ意味を汲み取るためにも、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに聞いてみることにしました。
- ポイントさん
- 「山田部長、明けましておめでとうございます!」
- 山田営業部長
- 「ポイントさん、今年もどうぞよろしくお願いします!」
- ポイントさん
- 「お正月は、少しはゆっくりされましたか?」
- 山田営業部長
- 「いやぁ、今年は正月どころじゃなかったんです。年末にビジネスが成約したので、一次帰国もあきらめて、4月からの新規対応の準備に追われていたもので・・」
- ポイントさん
- 「そうだったのですね!」
- 山田営業部長
- 「そこで、ちょっとポイントさんに質問させてもらいたいことが出てきたんです。香港の社員は“タイトル”が何でそんなに大切なんでしょう?」
- ポイントさん
- 「タイトル・・役職ですか?具体的にどんなことがありましたか?」
- 山田営業部長
- 「ああ、それなんですが、ルイスです。タイトルをマネージャーにして欲しいと、要求してきましてね。しかもこの話はこれで2回目なので困っています」
- ポイントさん
- 「2回目というのは?」
- 山田営業部長
- 「彼は、前職は、米系同業他社の営業で通算5年間の経験があります。またセールスアシスタントマネージャーとしても、そのうち2年の経験があるので、当初からマネージャーで採用してほしいと言っていました。転職の目的もキャリアアップをしたいということだったので。でも、ご存知のとおりウチの営業マネージャーたちは、40代でも、アシスタントマネージャーがまだ数名いるので、まだ34歳になったばかりのルイスは、アシスタントマネージャーから始めてもらうしかないと判断し、ほぼ無理やり本人を納得させていたんです」
- ポイントさん
- 「なるほど、そういう経緯があったのですね・・」
- 山田営業部長
- 「でも、このビジネスを成約に結びつけたのも彼の功績が高ったこともあってか、彼自身としても自信をもってきたのでしょう。この新規ビジネスは、その担当者としても全責任をもって対応したいので、ぜひともマネージャーにしてほしいと話しがぶり反しまして・・・」
- ポイントさん
- 「ルイスさんは、とても積極的なタイプの方で、自信もおありでしょう。でも、タイトルだけの話で、昇給要求は出されませんでしたか?」
- 山田営業部長
- 「それが、なかったんです。僕からも聞きましたが、お金の話しではないというのです」
- ポイントさん
- 「この新規ビジネスの取扱額見込みはどのようなものになりますか?」
- 山田営業部長
- 「取引が始まれば、☆P商事の来年度予算額の30%を稼ぎ出す大型案件となります」
- ポイントさん
- 「それじゃぁ、ルイスさんが率いる営業サポートチームのサイズも決して小さくありませんね?」
- 山田営業部長
- 「そうです。営業部では2番目の組織サイズでサポートさせることになります。彼には、そのチームの統括能力に関しても期待するところなんです」
- ポイントさん
- 「それなら、実質上、りっぱなマネージャー職ですね」
- 山田営業部長
- 「そう、僕も彼にそう説明しましたよ。ルイスの上のマネージャーポジションは空席ですから、ほんとに実質上、彼がマネージャーなんだから、肩書きなんか気にしないでがんばってほしいと・・・」
- ポイントさん
- 「う~ん、それは、ルイスさんにはちょっと理解できなかったでしょうね」
- 山田営業部長
- 「それに僕が今心配しているのは、高いタイトルを目指すのは履歴書に書けば転職に有利だからだとか聞いたことがあるので・・・ルイスももう既に将来の転職のことを意識してるんじゃないでしょうか?」
- ポイントさん
- 「いやあ、それは今の時期においては、ちょっと考え過ぎでしょう。それより、丁度☆P商事の昇給時期が4月1日に当たることを本人も知っているでしょうから、そのタイミングを意識されてのアプローチだと思います。それより、実用面で困っていることはないでしょうか?」
- 山田営業部長
- 「ポイントさん、彼はこの☆P商事に入社してまだ半年なんですよ。営業部には入社10年選手が沢山いますよね、この4月にも1年未満で昇格させるのは、例外中も例外になってしまいますよね」
- ポイントさん
- 「社歴の問題があるのですね」
- 山田営業部長
- 「その上、年齢もまだ他のマネージャーに比べると10歳近く若い・・・その上40歳を過ぎたアシスタントマネージャーが数名いますし・・・」
- ポイントさん
- 「年功序列や他の社員とのバランスが気になるところですね」
- 山田営業部長
- 「彼がいくらできる人材だからといって、彼が言うほど、この会社では簡単に昇格してはやれないことをルイスにも何回も説明したのですが、あまりピンときていないようで・・」
- ポイントさん
- 「香港の社員にとって、タイトルはもっと実用的な意味合いが強いですから」
- 山田営業部長
- 「実用的?タイトルってどのように実用的なものなのかなあ?」
- ポイントさん
- 「例えば、現地や欧米系企業との対外的なやりとりには、ルールがありますね」
- 山田営業部長
- 「ルール?」
- ポイントさん
- 「そうです。基本的には、双方レベルの同じ人同士がやりとりするというルールです」
- 山田営業部長
- 「はい」
- ポイントさん
- 「例えば、顧客側からマネージャーが出てくるような話しとなれば、こちらもマネージャーを出して対応しなければ取り合ってくれないような極端なケースがあります。特に中国の企業では、上席を出してほしいと良く要望を出してきたりしますから」
- 山田営業部長
- 「ああ、そういうことですね」
- ポイントさん
- 「次に実用的な面には、社内での力関係に影響するということがあります」
- 山田営業部長
- 「えっ?顧客側からの要求で偉い人出してくれ!と言ってくることは想像できますが、社内でタイトルなんてこと誰か気にしてるんでしょうか?」
- ポイントさん
- 「本人が一番気になっていると思います。例えば、営業部内の別のマネージャーさんとの力関係、そして、他の部門のマネージャーさんとの力関係についても気になりうると思います」
- 山田営業部長
- 「うむ~、日本人には見えないローカルでの力関係かぁ・・・ウチの会社は、よほど上にならない限り、個人のパフォーマンスではなく社歴、年齢、組織のバランスといった要素を組み合わせて定まっていきますから・・役職についてあまり意識していないというのが、本当のところかもしれません」
- ポイントさん
- 「日本では、まだまだ新規採用で入社して、長年かけて一歩一歩昇進していく、社内キャリアプラン構築型です。でも、それに比べ香港では、中途採用が主流となっていますから、採用するにあたり社員に期待している力を社内外で充分発揮してもらえるように配慮されタイトルを与えられることが必要になってきます」
- 山田営業部長
- 「おっしゃることは、よ~くわかります。でも、勤務年数が長い社員が多いウチの組織ですから、柔軟性に乏しいといわれても、急に組織や役職名を変えるわけにはいきませんよね」
- ポイントさん
- 「そこが本当に難しいところだと思います。しかし、これから会社では、ますます社員一人一人の効率性や成果を問う方向性となっています」
- 山田営業部長
- 「確かに。会社も社員にとっても厳しい時代に入っていきますね」
- ポイントさん
- 「今後の組織の柔軟性や多様性を考えると、今年の4月のタイミングから一度この点から考えてみられてはどうでしょう」
- 山田営業部長
- 「そうですね、ルイスのことも含め、この機会に実用的な役職と組織の関係を他の部門の日本人部長とも一緒に考えてみることにします」
- ポイントさん
- 「話は変りますが、今月も半ばあたりからは、山田部長にとってまたもや理想的なシーズンの到来ですね!」
- 山田営業部長
- 「またもやっていうと?」
- ポイントさん
- 「香港では、これからが、年末!」
- 山田営業部長
- 「ああ、旧暦でね」
- ポイントさん
- 「新暦に引き続きでこの年末も忘年会には繰り出せますよ!」
- 山田営業部長
- 「おお、そういうこと!それでは、いい!それじゃ、現地マネージャーを誘ってのノミニケーションから始めてみますか?次世代の組織の研究始めとしてどうですか?!」
- ポイントさん
- 「ああ、よかった。これでやっといつもの元気が出たようですね、山田部長!」
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- パソナアジアカンパニーリミティッド/人事労務(HRM)アドバイザリーサービス部
- TEL: 852-2882-3484, E-mail : hrmhk@pasona.com.hk
- Unit 01, 12A/F., One Peking,1 PekingRoad, TsimShaTsui., KLN., H.K.
[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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