第53回 「部下の返事にピンとこない時」香港ワーキングスタイル(6)
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
☆P商事(香港)営業所の山田営業部長は、香港での勤務も2年目を過ぎ、現地社員とのコミュニケーションにもすっかり慣れてきた・・・と言いたいところです。しかし、どうも質問の意味が上手く伝わっていないのか、時々、社員からの返答にピンと来ないことがあります。今朝の営業会議では、アシスタント・マネージャーのアレックスさんの一言に、山田部長はカチンと来てしまいました。そこで今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに香港人の表現の特徴について聞いてみることにしました。
- 山田営業部長
- 「あれは、問題発言ですよ、営業会議でのアレックスの一言」
- ポイントさん
- 「あのう、すみませんが、どちらのアレックスさんですか?地元・中国企業担当のアレックスさんですか? それとも、日系企業担当で日本語を流暢に話すアレックスさんでしょうか?」
- 山田営業部長
- 「好対照な二人のアレックスが居ますからね、営業部には。中国企業担当のアレックスの方ですよ。日本語を話す方のアレックスは、ガタイがでかいので、ビック・アレックスと呼んでいます。彼とは日本語で話すので、こんな行き違いはあまりないのですが・・・」
- ポイントさん
- 「それでは、普通サイズのアレックスさんの方に、どんな問題発言があったのですか?」
- 山田営業部長
- 「ちょっと、長い話になりますが、彼が担当している顧客への納品に手違いがあって・・」
- ポイントさん
- 「先週末の話しですね。ちょっと耳にしました。工場の方でパッキングにミスであったとか・・・」
- 山田営業部長
- 「そう。それについては、普通サイズのアレックスが機転を利かせ、香港から手配してくれたところまでは良かったんですが、香港からのトラックが、通関でたまたま手間取って・・・、結局またデリバリーが遅れてしまった・・・」
- ポイントさん
- 「それはまた、不幸に不幸が重なったわけですね」
- 山田営業部長
- 「丁度、今朝、この営業会議直前に、エンドユーザーから私の方へも、原因追究の問い合わせが入ったこともあったので、営業会議の前に“どうなっているんだ?”ってアレックスに尋ねたわけですよ」
- ポイントさん
- 「はい・・・」
- 山田営業部長
- 「もし、ビック・アレックスだったら、とにかくまずは“すみませんでした”って言いますよね?!」
- ポイントさん
- 「日本語では、すみません・・が円滑油ですね」
- 山田営業部長
- 「ところが普通サイズのアレックスは、開口一番、何と言ったと思います?!」
- ポイントさん
- 「すみません・・は無いでしょうね」
- 山田営業部長
- 「すみませんどころか、“私には関係ない”と言ったんですよ!!何が関係ないですか!!自分の仕事じゃないですか!!日本で“私に関係ない”なんていう台詞を吐くのは、不正献金が発覚した政治家ぐらいですよ!!」
- ポイントさん
- 「いやあ、山田部長、いつも上手いことおっしゃいますねぇ・・・」
- 山田営業部長
- 「そんなところで感心してないで、ポイントさん!そういえば、この前の会議でも、普通サイズのアレックスに、彼の担当顧客について尋ねたことがあったんです。“そこどうなっているの?”って尋ねたところ、アレックスは“知りません”と一言だけですよ」
- ポイントさん
- 「山田部長にとっては、返事にはなっていないということですが、アレックスさんは、本当に知らなかったので知らないと答えたのでしょう」
- 山田営業部長
- 「正直、カチンときますよ。知らないのはいいけど、そしたら、ちょっと調べてみましょう・・とか、気を使って答えてくれれば良いものを」
- ポイントさん
- 「そうですね。そこまで思いやりを言葉にする日本語はとっても美しいです。でも、香港で想像力を働かせて話してくれる人は多くありません。でも、あきらめず“知らないのであれば、調べてから報告して下さい”と具体的にリクエストしてください」
- 山田営業部長
- 「そうなんですね・・具体的に・・」
- ポイントさん
- 「香港では、日本語が話せる人が多いのでとても助かりますが、それでも、絶対多数の社員は、何語で話そうが、広東語で考えています」
- 山田営業部長
- 「そりゃそうでしょうね。僕も何語で話しても感性は日本語ですから」
- ポイントさん
- 「広東語の感性であれば、尋ねられたことに主語がない場合には、まず、自分のことを聞かれていることになり、自分のことを答えます。また、相手の質問には、端的に即答で答えるのが一般的です」
- 山田営業部長
- 「ああ・・だから、知りません(唔知)・解りません(唔明)・ダメです(唔得)・・という答えが多いんですね・・」
- ポイントさん
- 「また、今回、問題発言と言われている“関係ありません”(唔関我事)も、良く聞く返事の一つかもしれませんね」
- 山田営業部長
- 「良く聞かれる?!でも、自分に関係無いという意味でしょう?!社員の立場では、無責任な問題発言ではないのです?」
- ポイントさん
- 「“どうなっているんだ?”と尋ねられれば、因果関係を尋ねられたと、自分はこの問題の原因には関していないという答えをしているのでしょう」
- 山田営業部長
- 「それは、僕もよ~く判っていますよ、もちろん彼のミスではありません。でも、“どうなっているんだ!!”っていう質問が自然じゃないですか?」
- ポイントさん
- 「そこでも、尋ね方を工夫していくと・・・」
- 山田営業部長
- 「郷に入っては・・ですかぁ」
- ポイントさん
- 「ちょっと、エンドユーザーに返答しなければならないから、“最初から説明してほしい・・”と、具体性をもってお尋ねいただければと思います」
- 山田営業部長
- 「具体的に答えを導き出す・・ああ、骨が折れるなぁ・・日本語って楽だと思いませんか?」
- ポイントさん
- 「そうですか、楽でしょうか?」
- 山田営業部長
- 「えっ?」
- ポイントさん
- 「もし、昨日のように夜遅くまでカラオケで飲んで帰った翌朝、奥さんから、夕べは遅かったわね・・と聞かれたら、奥さんを思いやって詳しく答えないといけないということですよね・・」
- 山田営業部長
- 「いやあ、このような場合には、ここは香港ですから、私には関係ありません・・ポイントさんに強引に誘われたんで・・・って答えておきます!」
- ポイントさん
- 「そういう学習は、お早いですね」
- 山田営業部長
- 「もちろん!!」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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