第47回 「現地社員にもう一歩踏み込むための会議」
‐ローカル社員の心理入門シリーズ(その6)
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
今週の人事管理のプロ ポイントさんは、香港で良好な人事マネージメントを行う為に知っておきたいローカル社員の考え方や価値観、働き方などについてお話します。
☆P商事(香港)営業所の営業部は、日本的な顧客第一主義をサービスモットーとしています。しかし、現地社員に日本のサービス精神を伝えることは難しいものです。営業部長の山田部長は、営業部の現地マネージャー陳さんの融通が利かないクールな顧客対応がどうも気になります。そこでやっぱり頼りになる我らポイントさんに相談することにしました。
- 山田営業部長
- 「なんとかなりませんかねえ、香港でも日本的なサービス精神の徹底を図りたいのに、現地のマネージャーはあまりわかってないんですよね・・」
- ポイントさん
- 「クレームでもありましたか?」
- 山田営業部長
- 「はっ?早耳のポイントさんらしくないですね。営業部の陳マネージャーに届いたクレームについて、総経理から聞いてないのですか?」
- ポイントさん
- 「ああ、それならちょっと聞きました」
- 山田営業部長
- 「コンプレインレターは匿名で来たので、事の真相はわからないのですが・・・・よく言うじゃないですか、火の無い所から煙は出ないと言うか・・・」
- ポイントさん
- 「陳さんから煙が?」
- 山田営業部長
- 「実は、時々注意して見ていたんですが、僕はどうも陳さんの顧客対応が気になっていまして・・・陳さんはお客様である日系企業の現地担当と、もちろん広東語や普通話でコミュニケーションを取っているので、話の中身や詳細までは私にはわかりませんが・・・でも、いつもなんとなく素っ気ないような気がしていて・・・」
- ポイントさん
- 「素っ気無い・・・」
- 山田営業部長
- 「同じお客様から何回も電話があったり、何度もしつこく交渉されていることが多いようですが、いつもあっさり返事するのです。“それは無理です”と言う感じで、簡単にノーと言っているようで・・・」
- ポイントさん
- 「それは、“ノー”だったら“ノー”とおっしゃるでしょうが・・」
- 山田営業部長
- 「でも、時には、時間を置くとか、言葉を濁すとか、僕にも相談もないし・・・」
- ポイントさん
- 「日本語と中国語には違いがありますね。陳さんは、香港や中国のお客様の現地人窓口の方々としてやりとりされるわけですから」
- 山田営業部長
- 「それはわかりますが・・・」
- ポイントさん
- 「中国語にも“ちょっと考えておきます”といった曖昧な表現がありますが、このような表現を使うと、香港では、相手に可能性があるのかなという期待を与えてしまいます。その上、中国のお客様に対してとなると、毎日朝夕電話がかかってきますよ。“もう考えてくれたか?!早くなんとかしてくれ!”となってしまうでしょう」
- 山田営業部長
- 「そ、そうなんですかね・・」
- ポイントさん
- 「それに、陳さんは特に率直な方ですから」
- 山田営業部長
- 「そう、ホント率直ですよねえ」
- ポイントさん
- 「それに、営業部では、現地のマネージャーに取引条件の変更など、権限を与えておられませんね?」
- 山田営業部長
- 「はい、現地マネージャーには、独断で物事を決定させないようにしています」
- ポイントさん
- 「でも、それを無視して融通を利かせてしまうような現地社員だったら、かえって困りますね」
- 山田営業部長
- 「そう言われればそうですが・・・」
- ポイントさん
- 「でも、これは、☆P社のサービス精神を常に意識して、なるべく上手くコミュニケーションを取ってほしいと思われている・・・海外の日系企業のジレンマですね」
- 山田営業部長
- 「そうかもしれません。日本国内や日本人同士とは違うコミュニケーションの取り方や習慣が香港にはあるわけですが、それでも、できるだけ☆P商事営業部のサービスの質は落としたくはありません」
- ポイントさん
- 「社員の皆さんにも、そのところを理解してもらいたい・・・」
- 山田営業部長
- 「そうなんです。何かいい方法はありませんか?」
- ポイントさん
- 「やはり “ホウ・レン・ソウ”が欠かせませんね」
- 山田営業部長
- 「はあ・・?“ホウ・レン・ソウ”?“報告・連絡・相談”とは、ポイントさんにしては、随分オーソドックスですねえ」
- ポイントさん
- 「しかし、ホウ・レン・ソウの香港バージョンは、オリジナルとちょっと違いまして・・」
- 山田営業部長
- 「香港バージョン?」
- ポイントさん
- 「日本では、基本的には、部下から上司に対しての“報告、連絡、相談”となりますが、香港では、上司が部下に働きかけなければなりません。それも、“方向性、連帯感、想像力”を持たせるためのコミュニケーションに心がけていただきたい!・・というのが香港バージョンです」
- 山田営業部長
- 「はあ・・・」
- ポイントさん
- 「本来の“報・連・相”であれば、陳さんから毎日いろいろな報告や連絡が山田部長まで届いていますね」
- 山田営業部長
- 「そうですね・・マネージャーの皆さんには、毎日“営業報告書”を書いてもらっていますし、中国出張も時々同行しているので結構見て理解しているつもりです」
- ポイントさん
- 「そこをなんとかもう一歩踏み込んで、報告や連絡を意識して受けられることが必要です」
- 山田営業部長
- 「意識して受ける?」
- ポイントさん
- 「報告書は、本人の視点で書かれています。それを読むだけではなく、上司の視点で質問したり、話し合ったりすることにより、あまり大した問題でないのに必要以上に心配していたことや、逆に大きな問題が隠れていることに気づくことがあると思います」
- 山田営業部長
- 「それは、そういうこともあるね。たまに突っ込んで聞いてみると、びっくりするような事があったりするから」
- ポイントさん
- 「そこで、報告書に目を通すだけにとどまらず、報告会やミーティングをもって、これら内容について話してもらいます。上司から質問をしたり、社員からの意見を出してもらう-意識した“報告”を受けられれば、また、その度に、山田部長の“方向性”についても示す機会になります」
- 山田営業部長
- 「営業部の“方向性”を常に刷り込める機会となるわけですね」
- ポイントさん
- 「そうです。そして、また、報告会やミーティングでは、一方通行でなく、上司と部下が共に問題を共有し解決策を検討し合うことで、“連帯感”を感じさせることにもつながります」
- 山田営業部長
- 「それで、方向性、連帯感の“ホウ・レン”ですか?」
- ポイントさん
- 「そのとおりです」
- 山田営業部長
- 「それから、報告書には、クレームの報告や残業申請などもあります」
- ポイントさん
- 「それらも同じように意識した報告にしましょう。習慣的に書き込んでいるだけではなく、内容を分析すべく報告して検討してみましょう」
- 山田営業部長
- 「クレーム、残業の内容を報告し検討し合う・・・それができれば、クレームの原因や対処方法、予防対策など検討できますね!」
- ポイントさん
- 「その上、それは、仕事への“想像力”になっていきます」
- 山田営業部長
- 「ああ、この“想像力”で、“方・連・想”の完成ですね」
- ポイントさん
- 「そのとおり!香港の日系企業と食卓には、ホウ・レン・ソウが欠かせません!!」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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