第38回 「昇給率に惑わされず、報酬の構成を見直す(その2)」
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
今週も人事管理のプロ、我らポイントさんは、人件費削減(その2)をお送り致します。
☆P商事(香港)営業所では、昨年後半から続く売り上げ不振を受け、会社を上げて固定費削減に取り組んでいます。例年4月に実施してきた定期昇給を、この状況下で行うか決断しなくてはなりません。今日もやっぱりなんといっても頼りになる我らポイントさんに尋ねることにしました。
- 山田営業部長
- 「おはよう、ポイントさん!今日は朝一番にきましたよ!」
- ポイントさん
- 「おはようございます。お早いですね」
- 山田営業部長
- 「それにしても、熱心に新聞を読んでいますね」
- ポイントさん
- 「エグゼクティブは、早朝の時間を“情報のインプット”に使うというではありませんか!そして、9時からは“アウトプット”つまり仕事時間開始です!」
- 山田営業部長
- 「へえ~。ポイントさん、顔に似合わずエグゼクティブですか。かっこいいこと言いますね」
- ポイントさん
- 「あっ、そろそろアウトプットしましょうか?部長、本日の御用は何でしょう?」
- 山田営業部長
- 「昨日佐藤総経理がウチの4月昇給は香港の日系企業のアンケート結果をベースに平均2%で決定と聞きました。でも、単刀直入、ポイントさんはどう思いますか?
この不景気でしょ。正直、昇給している場合じゃないですよ。世間じゃ「凍結」やそれどころか「減俸」の話ですもんね」
- ポイントさん
- 「・・・簡単に「凍給」や「減給」に踏み切るというのもね・・・」
- 山田営業部長
- 「ああ、もう、歯切れ悪いなぁ。ポイントさん!地元企業の様子を聞かせてもらいたいんですよ。」
- ポイントさん
- 「それでは、昨年末から今月までに地元紙で取り上げられた企業の昇給調査や方策決定の中身について少し例を挙げてご説明しましょうか」
- 山田営業部長
- 「ポイントさん!そう来なくっちゃ」
- ポイントさん
- 「例年香港では11月ごろから翌春にかけて、次年度の昇給率を発表する団体が多いのです。でも昨年末に関しては、総雇用者数が50万人を超える「香港雇用主連合会」が、08年末に発表予定の09年昇給率を93年以来初めて提示せず仕舞いでした。」
- 山田営業部長
- 「う~ん、景気後退を実感し始めたのが去年の11月頃だから、被雇用者が50万人もいる団体なら、社会的な影響を考えてそりゃ昇給率の提示を躊躇しただろうね。」
- ポイントさん
- 「そして、連合会は今年の3月になり調査結果として、今年1-2月に連合会加盟の企業の内4割が昇給を実施し、5割が昇給を控えているという実績発表をしました。これら昇給した企業の平均昇給率は、2.7%。しかし、昇給を控えた企業も含めた昇給率は1%に留まったそうです。」
- 山田営業部長
- 「やっぱり、地元企業は昇給を控えているという状態なんですね」
- ポイントさん
- 「企業によっては、毎年春だった昇給時期を今年中旬まで遅らせるという発表をしています。例えば地元大手で、昇給・ボーナスの目安とされるHSBC銀行は、業績が上向いていた07年12月末には、翌08年の昇給とボーナス支給の計画を年2回の昇給とパフォーマンスボーナスを最高5ヶ月分支給する計画など前向きな発表をして、優秀人材の確保に努めていました。一転して09年については、つい先日になってやっと、一部の低賃金層の行員以外は「凍結」と発表したのです。」
- 山田営業部長
- 「ジェットコースターなみの急降下ですねぇ」
- ポイントさん
- 「でもモチベーションを下げないよう、パフォーマンスボーナスは、最大6ヶ月半、平均1-2ヶ月分「支給する」とも発表しています」
- 山田営業部長
- 「凍結しても、ボーナスは支給するんですかぁ・・・」
- ポイントさん
- 「キャセイ航空についてお話ししましょう。こちらは、昨年08年11月早々、09年の平均昇給率を平均2%と発表していました」
- 山田営業部長
- 「へぇ~、リーマンショック直後の11月に2%昇給を発表したんですか?」
- ポイントさん
- 「2%昇給の他にも、一般職員へ“特別報酬”を支給するとしています」
- 山田営業部長
- 「すごいなあ。でも何ですか?その“特別報酬”って何ですか?」
- ポイントさん
- 「曰く、社員の“生活保障”の為という目的で、給与の半月分相当、或いはHK$8,000のいずれか高額な方を“特別報酬”として社員へ支給するというものらしいです」
- 山田営業部長
- 「なんだかどこかの国の“定額給付金”みたいですねぇ・・・」
- ポイントさん
- 「でも、定額給付金は、総理大臣も受け取るようですが、キャセイの“特別報酬”は、上級管理職者には支払われません」
- 山田営業部長
- 「でも、キャセイのように昇給するは、特別報酬は支給するじゃ、コスト削減したい我社の参考にならないよね?」
- ポイントさん
- 「ところがですね、山田部長。キャセイの場合支給ばかりではないんですよ」
- 山田営業部長
- 「へっ?・・・というと・・・」
- ポイントさん
- 「この発表では、今まで支給してきた1ヶ月の給与相当の“年度末手当”をこの“特別報酬”にスイッチしたというものでした」
- 山田営業部長
- 「ええっ?!それじゃぁ、2%昇給されても、年収ベースで考えると給与1ヶ月分のボーナスが半分なら“昇給”じゃなくて“減俸”ですよね」
- ポイントさん
- 「会社は、ボーナスはあくまで企業側の配慮から支給しているものであり、減俸ではないとコメントしています。
この他にも企業によっていろいろな方策が発表されています。毎月数日或は、年間40日もの“無給休暇取得”を社員に要請するケースなどですね」
- 山田営業部長
- 「これも実際には「減給」ですよね・・」
- ポイントさん
- 「要するに、報酬構成を見直し、新しい“セット・メニュー”をつくる必要に迫られているということですね」
- 山田営業部長
- 「報酬の“セット・メニュー”?」
- ポイントさん
- 「昇給の凍結、無給休暇などは、“メインディッシュ”を減らすメニューの変更というわけですね。おそらく佐藤総経理の方針は、社員の生活を支えるメインディッシュは死守したいと思われたのでしょう。でも、“付け合せ”に関しては、社員の空腹を満たす範囲で、コストカットを工夫し「明日の定食」を完成される必要があると思います」
- 山田営業部長
- 「あのう・・すみません、ポイントさん。この話は、まだ長引きそうですね。その「明日の定食」の前に、今日のお昼はいつもの店で「今日の定食」を食べませんか?」
- ポイントさん
- 「賛成!!」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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