第37回 「コストカットから見る、報酬制度の見直し」(その1)
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
今週は人事管理のプロ、ポイントさんが固定費削減のヒントとして「報酬制度の見直し(その1)」をお話します。
☆P商事(香港)営業所では、昨年から続く売り上げ不振を受け、全社を挙げて経費削減に取り組んでいます。会社の方針で、固定費の大きな要素となっている「人件費」を削減する事になり、川崎経理部長は、一体どこから手をつけていいものか頭を悩ませていました。そこで今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに先ず相談することにしました。
- 川崎経理部長
- 「丁度探してたんですよ、ポイントさん!」
- ポイントさん
- 「・・・・・・・」
- 川崎経理部長
- 「僕の顔に何か付いていますか?そんなにジッと見つめられては照れるなぁ・・・」
- ポイントさん
- 「いやぁ、その眉間のシワが今の部長のご苦労を全て物語っていると思いまして・・」
- 川崎経理部長
- 「そりゃシワも増えますよ、来期の予算編成の真っ最中ですよ!」
- ポイントさん
- 「厳しいようですね。でも、経理プロ川崎部長が私に予算編成のご相談ですか?」
- 川崎経理部長
- 「今、経費削減が何よりの課題です。人件費も例外ではありませんから」
- ポイントさん
- 「そうですね」
- 川崎経理部長
- 「ここ☆P商事は香港進出以来二十数年、どんな環境下でも、定期昇給だけはしてきましたよね。でも、今年はちょっと様子が違います。例え定期昇給を凍結しても削減にはなりません。でも、そうかといっても欧米企業のように、業績悪化すれば指名解雇でバッサリ・・・というのは、調和と人材育成を重んじる我☆P商事の経営方針・企業理念には合わない・・・そこで、是非ポイントさんには、人件費削減の妙案をお聞きしたかったんです」
- ポイントさん
- 「妙案ですか?残念ながら、人事には妙案はありません。ただし、正論はあります」
- 川崎経理部長
- 「はあ・・・」
- ポイントさん
- 「部長にお聞きしたいのですが、何故会社は社員に報酬を払うのでしょう?」
- 川崎経理部長
- 「えっ?一休さんの問答みたいですねぇ・・・そりゃタダ働きさせるわけにはいかないじゃないですか?!」
- ポイントさん
- 「そのとおり、会社は社員の労働の対価として報酬を払っていますが、その報酬配分には、目的と機能があります」
- 川崎経理部長
- 「目的と機能・・・?」
- ポイントさん
- 「その報酬の目的と機能とは・・・会社の許されるコストの範囲内で、
- ● 社員を会社に定着させる
- ● 社員の個人的、社会的な要求を満たす
- ● 報酬システムと人事制度を連動させ、会社が価値を認めるものと認めないものを社員伝達する
- ● 社員の態度や行動を会社の望むべき方向性に動機付ける
・・であります」
| 報酬 |
A 固定現金報酬 |
B インセンティブ |
C ベネフィット
(福利厚生、付加給付) |
| ☆P商事香港営業所報酬支給項目 |
基本給 |
業績ボーナス
コミッション |
(任意のみ)通勤手当、
食事手当、出張手当、
残業手当、医療保険 |
| ダブルペイ |
| 企業における報酬の目的と機能 |
●社員の個人的、社会的な要求を満たす。 |
●社員の態度や行動を会社の望む方向性に動機づける。 |
●社員を定着させる。 |
| ●報酬制度と人事制度を連動させ、会社が価値を認めるものと認めないものを社員に伝達する。 |
|
| 社員からみる報酬の価値 |
生活の糧であり、転職の際には、自身の市場価値の指針となる。 |
自身のパフォーマンスや実際行った業務への対価、より良いパフォーマンスへの動機付けとなる。 |
帰属心を育む。保障され、安心感を得る。 |
- ポイントさん
- 「次に、会社からの報酬は、A.固定現金報酬、B.インセンティブ、C.ベネフィット(福利厚生、付加給付)に分類されます。それでは、☆P商事で実際に支給している項目をここに挙げてみましょう」
- 川崎経理部長
- 「Aの固定現金報酬とは“基本給”のことですね。それから、Bには“業績ボーナス”ですね。それから営業チームには“コミッション”も出しているし、Cは、まあいろいろありますねぇ・・・“交通費”、“食事手当て”、その上、営業職は“出張手当”、一般事務職には“残業手当”。これ以外に全社員への“医療保険”」
- ポイントさん
- 「社員への報酬決定とは、許されるコストの範囲内で、報酬のもつ目的や機能の最大限の効果を狙って、支給総額だけではなく、報酬種類A、B、Cをどのようにミックスするのかを人事制度と共に考えるという作業です。そして、今、その人件費を削減するという作業は、報酬決定におけるこれらの考え方と作業をそのままさかさまにしてみること・・・削減額を最大限にし、社員への負の影響を最小限にする作業です。さて、川崎部長、ABCのどの部分から削減を考えられますか?」
- 川崎経理部長
- 「おお、ついに、これが今日の話しの山場ですね!・・・やはりC.のベネフィット-福利、厚生や付加給付からの着手するのが無難でしょう・・・、Bボーナスは業績に左右され確約しているわけではないですし、Aだと、基本給でしょ、そうなると・・・」
- ポイントさん
- 「基本給に着手すると、社員の個人的、社会的要求を満たすことを妨げる・・毎月の社員の生活に毎月直接影響しますからね。家のローンを夫婦や兄弟・姉妹間で組んで負担している社員や、未婚であっても両親などを扶養している社員の事情も多くみうけられます。でも“福利厚生や付加給付から着手することは、ABCの支給バランスが極端にB、Cに偏っていない限り、比較的受け入れられ易いと思います」
- 川崎経理部長
- 「福利、厚生といっても、通勤・食事・出張・残業などのいろいろありますよね。これ以外にも“医療保険”などもありますから、確かに絞り込めば、経費削減につながりますよね。ポイントさん、引き続きアドバイス宜しくお願いしますよ!」
- ポイントさん
- 「わかりました。これらの報酬削減は、雇用契約上の準備や注意事項にもポイントがあります。また社員への通知や了解を得るといったコミュニケーションの問題も含んでいますから、このお話しを当面続けさせていただきます!」
- 川崎経理部長
- 「ああ、まだまだ続きますね、経費削減対応。眉間のシワ増える一方ですよ。 それに“僕の財布の中身もついでに削減されちゃってるしね。」
- ポイントさん
- 「なるほど・・・私も、眉間にシワこそ増えませんが、財布の中身は確実に削減されてきましたからねぇ」
- 川崎経理部長
- 「ポイントさん、さすがのんきな恐妻家!」
- ポイントさん
- 「あの・・・のんきなは余計です!!」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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