第30回 (雇用条件編5)「傷病手当と傷病休暇・・・?!」
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
人事管理のプロ、我らの“ポイントさん”では、香港での「採用条件」について10回シリーズでお届けします。その5は法定の“傷病手当”についてです。
☆P商事(香港)営業所の総務部へ河野部長が赴任してきて半年に近づいてきました。季節もすっかり秋めいた風が吹く今日この頃の香港、食欲や体育の秋どころか、体調を崩して休みをとる社員が目だってきました。そこで、今日もなんといっても頼りになる我らポイントさんに“傷病手当”について尋ねてみることにしました。
- 河野総務部長
- 「ポイントさん、香港の人は風邪をひきやすい体質なんでしょうか?」
- ポイントさん
- 「確かにそうかもしれませんね。香港の人々も健康意識が高まってはきていますが、日本のように義務教育で栄養や衛生観念を身に付けるような機会を持たなかった世代が今の社会の中核ですので、充分な睡眠と規則正しい生活、バランスのとれた食生活、手洗い、うがいの慣行、マスク着用などSARS流行を機に始めた習慣とも言えるかもしれません」
- 河野総務部長
- 「はあ~そうなんですか・・、それにしてもなんだか“都合よく”風邪をひく社員がいますね」
- ポイントさん
- 「“都合よく”風邪をひく?」
- 河野総務部長
- 「ええ、月曜日や祭日明けの翌日にきまって風邪で休む・・っていう」
- ポイントさん
- 「はあ・・そういう都合ですか・・」
- 河野総務部長
- 「いやあ、私もこんな勘繰りたっぷりの話はしたくないんですが、ご存知でしょ、総務部唯一の優男、ルイスですよルイス。どうも病欠を社員の当然の権利のように考えているような気がしてましてね。有給休暇と同じように病欠も“取らなきゃ損々・・”なんて、阿波踊り状態じゃないでようかね」
- ポイントさん
- 「はあ・・まあルイス君は河野部長のように徳島県人ではありませんので、阿波踊り状態というよりも“モラル”の問題ですね」
- 河野総務部長
- 「まさに、そういうことです!」
- ポイントさん
- 「それでは、ルイス君の話が出たところで、会社が保障すべき「傷病手当」についての妙をご説明させていただきましょう」
- 河野総務部長
- 「妙?!」
- ポイントさん
- 「まず、(1)“傷病休暇の累積”についてですが、先にその“対象”となる社員については、会社と連続して雇用契約を結んでいる社員となっています」
- 河野総務部長
- 「ルイスは私の赴任より先にこの会社に入社してましたから、6ヶ月以上の在籍でもちろん雇用契約を結んでいる正社員採用ですからね。でも、確かまだ入社1年にはなっていないとは言ってました・・」
- ポイントさん
- 「次に、(2)“傷病休暇の累積方法”に関してですが、2段階になっています。第一段階は“入社初年度の12ヶ月間は毎1ヶ月の勤務満了ごとに、2日間傷病休暇が累積されるということです」
- 河野総務部長
- 「はは~ん。わかりましたよ、ルイスは入社1年目ですよね、だから毎月必ず2日休んでるんだあ!!」
- ポイントさん
- 「また、第二段階としては、入社2年目以降から退職するまでの毎12ヶ月の1ヶ月勤務満了ごとに4日間が累積となります。ただ、何年勤続していても、累積できる日数は、最高120日までとされています。」
- 河野総務部長
- 「はあ・・そんなあ・・2年目から毎月4日の累積ですって!!・・ということは、来年もルイスのヤツ、この調子でいくと今年は隔週月曜日の病欠が、来年には毎週月曜日が病欠ってことにぃ~!?!」
- ポイントさん
- 「ええっと、お取り込み中のようですが、まだ、私の説明は終わってないのですが・・」
- 河野総務部長
- 「ああ、すみません、ちょっと頭痛が・・」
- ポイントさん
- 「頭痛はちょっと反応が早すぎますよ。実は、ここからが“傷病手当の資格”についての説明ですが、(3)4日間以上連続し病欠した場合にのみ、“病欠初日当日から過去12ヶ月における平均日給の5分の4”を傷病休暇手当てとして支給する義務があります。給料が日当制の人達も居ますから、休業保障という意味合いなんでしょうね。」
- 河野総務部長
- 「そうなんですか?!じゃあ1~3日の病欠には手当てが出ないわけですね・・」
- ポイントさん
- 「ただし、妊産婦の産前産後の検査や治療であれば、“傷病手当の資格”として1日ずつ取得することも認められます。」
- 河野総務部長
- 「4日間連続・・っていうと、ルイスのように月曜日に1日しか休まない場合であれば・・?」
- ポイントさん
- 「1日から3日までの病欠については、会社の裁量、つまり福利で与えるかどうかも、会社次第なんですよ!法律では、1~3日は無給の病欠で、診断書や領収書があっても、フルペイを義務付けていませんから。。。」
- 河野総務部長
- 「でも、診断書があれば給料を引かれないはずだって、前に他の社員にも言われたような気がするなぁ」
- ポイントさん
- 「それは、御社が雇用契約書に、“試用期間を満了した社員は、年間6日間のフルペイの傷病休暇を与える”と書かれているからですよ。ほら、ここ “但し、登録医の証明書を添えて病欠を証明するように”って。。。」
- 河野総務部長
- 「はあ・・じゃルイスは、毎月2日当たり前のように休んでるのは?」
- ポイントさん
- 「そうですね、傷病手当てが貰える日数とフルペイの傷病休暇を混同しているんでしょうね」
- 河野総務部長
- 「傷病休暇と傷病手当、それに会社裁量のフルペイの傷病休暇!なんだかややこしいなぁ」
- ポイントさん
- 「河野部長がきちんと理解されてないと悪用されてしまいますよ。会社が福利で与える傷病休暇も、上限の日数を決めていないと、診断書さえ出せば何日休んでも、給料が引かれない会社も有りますからねぇ。。。ルイス君に診断書は提出させてますか?」
- 河野総務部長
- 「へぇ?診断書?そんなのを会社に提出させるのですか?」
- ポイントさん
- 「病欠だって正式に証明されないと人事の対応はできませんね。特に36日または84日に至るまでの長期病欠においては、診断書のみならずし傷病有給休暇とみなされるためには、政府の医療関係機関として登録している医師及び漢方医からの登記書などについても提出も求めることになります」
- 河野総務部長
- 「ああ、皆、元気で出社してほしいものですね・・、それでないと人事が、これだけでも大変ですねえ」
- ポイントさん
- 「本当にそのとおりです。人事部では全社員に対してA..雇用期間の記録 B.
医療機関の証明等のファイリング C. 社員が既に取得した傷病休暇の消しこみ及び(2)“傷病有給暇の累積日”記録をアップデイトするなど、事務処理が続きます」
- ポイントさん
- 「それから、最後にちょっとだけ、人事の奥の手とでもいうのでしょうか、ちょっとお教えしておきますと、雇用契約書の「傷病手当」の項目には“法定どおり対処される・・”とあるだけで、お話したような傷病有給休暇の詳しいルールの詳細説明を避けているのですが、ご存知ですか?」
- 河野総務部長
- 「ははあ・・ん。なるほど、保障しているけれど、わざわざ説明しないことで権利の乱用を避けているっていうわけですね。」
- ポイントさん
- 「そうです。でも、もちろん病気になった社員に対しては、きちんと証明し、社員が心配することなく会社の人事部が法定ルールどおりに対処し、給与計算が行なわれれば良い訳ですからね」
- 河野総務部長
- 「でも、社員のモラルが崩れちゃってるルイス君には、「傷病手当」だけに、「付ける薬」が無い・・ってことで“落とし”ときますかねぇ」
- ポイントさん
- 「いやあ、「傷病手当」だけに、簡単に落とされないほうがいいのでは?」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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