第28回 (雇用条件編3)「産休」
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
人事管理のプロ、我らの“ポイントさん”では、香港で社員採用するときの「採用条件」について10回シリーズでお届けします。その3は“産休”についてポイントさんと一緒に考えてみます。
☆P商事(香港)営業所では、総務部の河野部長は日本から就任してきてはや4ヶ月目。日本語が話せるアシスタントのミッシェルさんを就任直後に採用し、試用期間も終了しようというタイミングです。そこでいよいよ10月ごろから本格的に仕事を・と考えていた矢先、ミッシェルさんが“おめでた”であると知らされた河野部長。そこで、今日もなんといっても頼りになる我らポイントさんに尋ねることにしました。
- 河野総務部長
- 「ポイントさん、ちょっといいですか?実は、ミッシェルさんのことなんですが・・・」
- ポイントさん
- 「ミッシェルさんですね。彼女、河野部長のお眼鏡にかなった人材だけあって、性格も明るくて社内でもすっかり打ち解けてきていますね。たった3年の社会経験とは思えないほど気が効くし、日本語もマンダリンも流暢に話されますし、とってもしっかりした方でよかったですね!」
- 河野総務部長
- 「それはそうなんです。本当にポイントさんのお誉めいただいたとおりなんですが・・・」
- ポイントさん
- 「そろそろ試用期間も終了するころ・・・えっ、まさか彼女から辞めたいとか言われていらっしゃるとか・・?」
- 河野総務部長
- 「いやいや、そうじゃないなくて・・・それに、今なら彼女から会社を辞めたいなんてこと絶対言わないでしょう!」
- ポイントさん
- 「?? すみません。一体どういうことですか?」
- 河野総務部長
- 「そのミッシェルさんなんですが“おめでた”だというのです」
- ポイントさん
- 「ああ、そういうことですか・・“おめでた”それは、それは・・・」
- 河野総務部長
- 「ポイントさん・・それは、それは・・じゃないですよ。さっき、来月の予定を打ち合わせた時に判ったんですが、、中国出張を予定に入れるように言ったところ、出張は今ちょっと難しい・・とかなんとかいうので、理由を聞いたらそういうことだったんですよ!」
- ポイントさん
- 「はあ・・そうですか・・」
- 河野総務部長
- 「やはり、この場合社員に出張させてはまずいでしょうか?」
- ポイントさん
- 「本人が行くと言っても、会社としては代理を立てる方が賢明である場合が多いでしょう。万が一のことを考えると一人身の社員より会社の責任を問われるリスクが大きくなっているのは確かです」
- 河野総務部長
- 「でも、そう考えると出張の話しだけじゃないですよね。7~8ヶ月もしたら産休に入るわけでしょ・・そのころちょうどわが社の中国新規プロジェクトが立ち上がる予定です。彼女は、この新規プロジェクトのために採用した人材ですよ。そのことを考えると、このまま正規採用してしまって良いのか正直考えさせられますよ!」
- ポイントさん
- 「河野部長、ここ香港で女性社員の長期的活用無くしては、どの企業も運営が成り立ちません。また、このような社会の需要に応えて結婚、妊娠、出産を経ても仕事を続ける女性社員が多いわけですから、これも同じ女性の仕事である妊娠、出産に関しても、会社も理解し受け止めていく必要がありますね」
- 河野総務部長
- 「私も理解していないわけではありませんよ、ポイントさん。でも、事実上、仕事に影響は無いとは言えませんよね。本当に有望な人材だとは思いますが、未だこの数日は試用期間中なわけで、このタイミングであればなんとかならないかと思っているのが本音ですよ」
- ポイントさん
- 「彼女の場合、現在試用期間であり、また、社員から正式に医師の診断書を提出し、産休取得についての申し出もされていないという点では、確かに悩ましい時期ですね」
- 河野総務部長
- 「そうでしょう。それじゃ何か方法はありませんか?」
- ポイントさん
- 「妊産婦の保護に関すの条例にははっきりと“社員が医師によって妊娠と承認された期日から産休を終え復帰する日までの解雇禁止”と明記しています。また、ミッシェルさんは正式な申し出をされていないことは事実ですが、たまたまとは言え、部長は既に“おめでた”の話しを直接聞き出されていますし、それに、試用期間において彼女の仕事に対する適合性が見られなかったと、相手を納得させられるに十分な注意や警告、またそれに対する証明や証拠となる記録などが残っているでしょうか?
- 河野総務部長
- 「もちろん何もの無いどころか、さっきは来月出張してほしいなんて相談していること自体、矛盾していますよね。やはり“不当解雇”と思われますよね」
- ポイントさん
- 「ご理解のとおりです」
- 河野総務部長
- 「あ~もうわかりましたよ。全くお手上げですね。無理だということであれば、もう腹を括りましたよ!働きますよ“お母さんと一緒”!」
- ポイントさん
- 「それでは、早速ですが、このあたりで妊産婦の社員の保護に関する法令を説明させていただきましょうか」
- 河野総務部長
- 「わかりました」
- ポイントさん
- 「主な内容としては、(1)産前産後の検査を保障する (2)産休を保障する (3)産休期間の給与を保障する (4)妊娠が認められた期日から出産後勤務復帰までの雇用の保障 (5)重労働等調整の保障が上げられます」
- 河野総務部長
- 「はあ、いろいろありますね」
- ポイントさん
- 「また、有給の産休を取得するための前提条件ですが、さきほども触れましたように“産休開始日までに40週間以上継続した雇用関係が成立していること“そして“妊娠と出産予定日について、医師の診断書を会社に提出し産休の取得を正式に申請していること”となっています」
- 河野総務部長
- 「(1)の産前産後の検査・・っていうのもあったんですね。これも仕事を休ませて行かせる・・?」
- ポイントさん
- 「そのとおりです。これは、傷病休暇と同様に扱います。ただし、急な病気ではなく定期検査であれば、検査日などは事前に申請するルールを定めておきます。また、取得した日数や関連書類なども記録、保管しておかなければなりません」
- 河野総務部長
- 「う~ん、(2)の産休期間は何週間ですか?」
- ポイントさん
- 「産前産後合わせて10週間です。また、出産予定日から2~4週間前の日程を社員と相談してあらかじめ決めておき取得を開始させます。この時期に合わせ、会社は社員の産休時期をカバーするための人員の手配などを進めます。社内で難しい場合には短期派遣をアレンジすることなどの工夫も必要ですから、スケジュールや仕事のマニュアル化をしっかり本人に計画させておきましょう」
- 河野総務部長
- 「なるほど・・(3)産休期間の給与というのは全額支給ですか?」
- ポイントさん
- 「いいえ、給与の5分の4を通常の給料日に支給します」
- 河野総務部長
- 「ああ、なんだかいろいろありますねぇ~。どうも今から気が重くなってきたなあ・・」
- ポイントさん
- 「それじゃここで、河野総務部長の気持ちを晴らす駄洒落といきましょう。ミッシェルさん、産休いただいただけに部長に感謝してますよ“サンキュー”ってね!」
- 河野総務部長
- 「それじゃ、ポイントさんにも、今日の産休のレクチャー“サンキュー”ですかね」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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