第18回 「面接でタブー!差別条例について」
パソナアジアカンパニーリミテッド 戸崎悦子
今週の人事管理のプロ、我らの“ポイントさん”は、香港の平等条例に抵触しないために採用面接などでの質疑について説明します。
☆P商事(香港)営業所の川崎経理部長は、経理部スタッフの退職願を受け、早速採用面接を行いました。でも、面接後、同席していた現地マネージャーが、すっかり困り顔になってしまいました。そこで、今日もなんといっても頼りになる我らの“ポイントさん”に話しを聞いてみましょう。
- 川崎経理部長
- 「ポイントさん、ちょっと気になることがあるんです」
- ポイントさん
- 「何でも納得する!がモットーの川崎経理部長。そういえば経理マネージャーのシェリーさんとご一緒に、先ほども面接されておられましたね?」
- 川崎経理部長
- 「そうなんですよ。ついに勤続12年のキャロルさんが3月の昇給結果も待たない2月末に、退職願を出して来てまして。それは待たないはずですよ。基本給与が20%近くもアップしてくれる転職先が見つかったというのですから。それで今週に入って慌てて補充採用の面接をしてたのです」
- ポイントさん
- 「はあ、そうでしたか・・・」
- 川崎経理部長
- 「私にとっては香港で始めての採用面接ですよ。もちろんマネージャーのシェリーさんにも同席してもらい今朝の面接が、最後の候補者だったのです。結果的には、夕べ面接した人を採用することにしたんですが・・」
- ポイントさん
- 「それはよかったですね。でも、それなのにまだ気になることって何ですか?」
- 川崎経理部長
- 「それは、ちょうどさっき、最後の候補者の面接を終えてシェリーさんと最終的な検討した結果、夕べの候補者を採用すると決定した時なんです。シェリーさんの顔色が変って、大変心配そうな顔をするんです」
- ポイントさん
- 「ええ?彼女にとってもついに部下を採用できたのに、困り顔っていうのはおかしいですね。今朝の面接で何か特別なことがありましたね!?」
- 川崎経理部長
- 「いやあ、私としては特別っていわれても別に・・。面接ではシェリーさんから職務経験について徹底的に専門的に質問してもらいました。私は、ああ、今回については、ちょっと家庭環境について聞きましたから、公私にわたった質問でしたね」
- ポイントさん
- 「・・公私にわたった・・わけですね。私的な部分として何を聞かれましたか?」
- 川崎経理部長
- 「まずは、“誰と同居してますか?”ってね」
- ポイントさん
- 「はあ・・同居相手ですか・・・・・それで?」
- 川崎経理部長
- 「家族と一緒・・・という返事でしたから家族構成を聞きました」
- ポイントさん
- 「家族構成・・・それで?」
- 川崎経理部長
- 「お母さんとおばあさん、それにお兄さんという家族構成でお母さんとおばあさんの年齢を・・」
- ポイントさん
- 「・・・はあ・・・」
- 川崎経理部長
- 「それで、なんとおばあさんはもうすぐ90歳になるというので、私の田舎のばあさんのことを思い出し“おばあさん元気なの?”と聞いたら、なんでも3年も寝たきりだそうです。彼女のお母さんが介護しているって言ってました」
- ポイントさん
- 「はあ・・・介護問題、随分トレンディーな話題にまで波及しましたね・・・・」
- 川崎経理部長
- 「それがそのお母さんも60歳半で、もともと腰痛持ちがもっとひどくなって大変だとか。まあ、日本でもよくあるシルバー世代の話しですよね。これは、別にまずい話ではないでしょう?」
- ポイントさん
- 「長年務めたシェリーさんとの世間話しであれば良かったのですが・・・。川崎経理部長が、どれだけ社員思いの良い上司であるかについては、彼女は充分理解していますから。彼女のお母さんが入院した時、お見舞いのお花を贈られたそうですね。無口な彼女が僕に話してくれましたよ」
- 川崎経理部長
- 「いやあ・・・そうでしたか。それじゃどうしてこの候補者を採用しないという決定を聞いて、候補者ではなくシェリーさんの顔色が変ったのでしょう?」
- ポイントさん
- 「それは、会社におけるリスクがあるのではと心配しているのでしょう」
- 川崎経理部長
- 「リ、リスクって?!」
- ポイントさん
- 「それでは、ここではっきり申し上げますが、採用においては、この会社で与えられる職位と職務内容に関連する質問に焦点を当てられ、これらの質疑応答によって候補者のもつ能力、経験、技術、適応性を会社が理解し判断した上で、入社の是非が決定されているという印象が残る面接をしていただくべきです。それは、面接結果が不採用であっても候補者にとっては就業の機会が平等に与えられ、また、それ以外の判断要素を残さない面接での質疑でなければならないということですね。」
- 川崎経理部長
- 「・・・ということは、今朝の面接で聞いたことは・・・」
- ポイントさん
- 「川崎経理部長のご質問は、家族、健康状態、介護されている家族がいること、などもあり・・」
- 川崎経理部長
- 「ああ、リスクだらけ・・・」
- ポイントさん
- 「シェリーさんの心配は、この不採用になった候補者が川崎経理部長からお尋ねになった質問をどのように受け止めているか・・・という点ではないでしょういか?」
- 川崎経理部長
- 「う~ん」
- ポイントさん
- 「香港も中国返還前ごろから盛んに欧米から機会平等に関する法律を取り入れてきています。これは、全ての香港市民が、性別・婚姻状況・妊娠・心身的ハンディキャップ・家族/家庭環境などに左右されることなく、就職・教育・社会的/政治的活動など全ての機会を平等に与えられるためというのが基本です。採用面接においてももちろん充分考慮して当られるべきですね。また1996年には政府の法定機構の一つとして「平等機会委員会(Equal
Opportunities Commission)」が設立しており市民の相談窓口となっています」
- 川崎経理部長
- 「ああ、・・・となると私の質問は・・まずかった!」
- ポイントさん
- 「今後の採用面接では、是非、このようなグレーな話題は極力避けていただくべきですね」
- 川崎経理部長
- 「いやあ、ポイントさん。だから、私はグレーな話をしたつもりはなくてですねぇ、話しはシルバーなんですよ・・・なんてね。つまんない落ちにもなりませんよ、この手の話題は!ああ、助けてポイントさ~ん!!」
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[ 時事速報・香港第2便より転載 ]
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